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シリアス長編。

修正してアップし直しました。
Wedding plan』『Audience』を読んでから読み直して頂くと色々と…ですね…(泣)

2010/03/20 修正





Departure~序章~


 美星学園に新たに新設された、航宙学科航空コース。そこの滑走路には今、三機の飛行機が翼を休めていた。それらを遠くから眩しそうに眺めるのは、変わった制服を着た女性の後ろ姿。
「此所に居たのか」
 その背中に、アルトは声を掛けた。彼女は振り向くことなく、その銀色に輝く機体を見つめていた。そのうちの一機が今、ゆっくりと滑走路を回り、そして、大きな音を響かせて、大空に飛び立っていった。
「わぁ…」
 彼女は感嘆の声を上げ、帽子を抑えて空を見上げる。
「…星の空を飛ぶ船ね。素敵だわ」
「飛行機、って言うんだぜ」
 アルトもその隣に立ち、碧空に飛んでいく機体を見つめていた。
 先ほど、彼らは無事美星学園航宙科を卒業した。アルトは主席、シェリルはあの多忙なスケジュールの何処でか、10位という成績で周囲の者を皆驚かせていた。
「アルトは航空コースに進むんでしょ」
 振り返ることなく、シェリルは彼に問い掛ける。
 彼らは先日、婚約した。そこに至る経緯もいろいろあったのだが、晴れて婚約者、という間柄になったものの、未だに別々に暮らしている。そして、こんな風に二人で話す時間は、婚約して以来久しぶりだった。
 彼女は来週から銀河ツアーへ、地球へ向けて出発する。この惑星から地球へは往きだけでもおよそ1年、場合によっては数年かかる場合がある。ましてや、途中いくつかの船団や惑星を回ってツアーを行うのだ。

――いつ、帰ってこられるのか。

 本当は、傍にいたい。
 離れたくない。
 離したくない…。

 彼女自身は決して言わないが、今回のツアーもただのツアーではない。
 ――グレイス・オコナーらギャラクシーの策謀の生き証人として、シェリルは地球連邦政府に証人喚問へ出頭するよう、呼ばれたのだ。
 実のところ、連邦政府はもう一人の証人であり、貴重なサンプルであるランカも召喚したかったらしいのだが、それを止めたのはシェリルだった。本来、フロンティア新惑星政府に地球の役人が来訪し、調査する予定だったが未だ人心が落ち着かないこと、環境調査が進んでないことを理由とし、また、若干ながらも残存しているバジュラへの対処にどうしてもランカをフロンティアから移動させるわけにはいかず、その代わり直接シェリルが地球へ赴くことで、漸く手落ちとなった。
 同行するツアースタッフも、ギャラクシーから随行していたスタッフ32人だけとなる。勿論彼らも全員少なからず、何らかのインプラントによる記憶操作を受けていたが、現在はそれら全て洗い直されている。
 スタッフが32人というのは少なすぎるが、今回は各船団で活動している早乙女一座のスタッフが協力し、船団や惑星にて現地スタッフとしてフォローしてくれる手筈となっていた。
 なお、現在彼女が所属しているベクタープロモーションのスタッフも同行しない。人手が完全に足りず、また他船団とのツアーを経験しているスタッフは社長であるエルモをはじめ、誰一人としていない。
 そして、シェリルを守る護衛官は嘗てグレイスの指揮下にあったサイボーグ、ブレラ・スターンも含めて三人だけ。
 フロンティアには人員を割ける余裕はなく、それならばせめてSMSから誰か同行するべきだという意見があったが、彼女は断った。
「今、やらなければいけないことは他にあるでしょう」
 同行を申し出た婚約者にすら、彼女はこう言い放った。

 アルトは大学に通いながら一年間学園に残って航空コースを受講する。飛行機で大気圏内の空を飛行するのはまた別の技術を要するためだ。SMSも兼任のままなので、非常にハードな生活を送ることになるが、それはアルト自身が望んだことだ。
「ああ。お前も受ければ良いだろうに」
 そう答えると、
「必要ないわ。もし、飛行機が必要ならお抱えパイロットを雇うもの」
 シェリルはそう告げた。
「それは俺の事かよ」
 アルトはそう言って笑ったが、シェリルは応えることなく真っ直ぐな瞳を飛行機に向けている。それがなんだか許せなくて、アルトは彼女の肩を抱き寄せた。
「…帰ってきたら」
 抱き寄せて、耳元で告げる。
「一緒に飛ぼう」
 何処までも、共に。この空へ。そしてその空の向こうまでも。
「…そうね」
 ゆっくりと振り返るその顔を捉えてアルトはそっと、彼女の唇に自らのそれを重ねた。
 重なり合う二人の顔は、彼女の帽子が風に吹き飛ばされ、その髪によって覆い隠された…。



 学校の裏手、柵を越えて二人は誰にも知られないよう学園を出る。
「早乙女のおじ様と矢三郎さんが?」
「ああ。少し、時間があるなら寄っていけと」
「それは構わないけど…アルトは大丈夫なの?」
 彼は未だ実家からの勘当が解けていない。そして、彼自身も家に戻る気はなかった。それなのに、シェリルを連れて屋敷に寄れ、と矢三郎は伝えてきた。
「大丈夫だろ。多分」
 いまいち頼りのない婚約者の反応に、彼女は笑う。

 そう。婚約者、だ。
 大戦直後の混乱から日常が戻るまでに時間は掛かった。その間二人でゆっくり話す時間はなかったが、戦時中彼らの戦いはほぼ全てリアル中継され、全船団員には既に『フロンティアの英雄と銀河の妖精は恋人同士』という認識がされてしまっていた。
 だが、肝心の二人の関係は変わらない。
 アルトの方は何度か告白しようとしたが、シェリルはそのたびにはぐらかす。そして二人の時間はなかなかとれない。だが、
「結婚して、俺の家族になってくれ」
 学校帰りのカフェ。
 アルトはシェリルにそう告げ、彼女も受け入れた。二人の背中を押したのは、もう一人の歌姫。その日の内に婚約記者会見が開かれ、フロンティア中が湧き上がった。だが、戦時以来、二人で夜を過ごすことはない。
 そのことで、ねちねちと矢三郎から嫌みを言われたこともあった。
(お膳立てなら、ごめんだが)
 贅沢も言っていられる状況では無さそうだ。
「でも、今回の件では本当お世話になるから正式にご挨拶しておきたかったのよね。事務手続きは殆どメールで済ませてたし」
「そうだな」
 シェリルはあくまで仕事上の話、と思っているようだ。
「そういえば、着替えた方が良かったかしら」
 二人とも美星学園の制服のままだ。
「構わないだろう。式が終わったらすぐ来るように言ったのは向こうだし」
「そう。ならいいけど…」
 他愛のない会話を続けようとするのは、彼女自身も緊張しているのだろうか。アルトはシェリルの手を取ると、そのまま強く握りこむ。彼女も微笑み、握り返してきた。




 父、早乙女嵐蔵は未だ車椅子だったがその顔色には精気が戻り、嘗ての覇気が感じられる。それでも彼は怯えることなく、真っ直ぐにその視線を受け止めた。
「ご無沙汰をしておりました。お見舞いにも行けず、申し訳ありません」
 シェリルが頭を下げる。誰に倣ったのか、畳の上に膝をついて、深々とお辞儀をする。
「構わんよ。こちらこそ、こんななりで済まない。いいから、頭を上げなさい」
 柔らかな父の声に、アルトは驚きを隠せずに思わず父の顔を凝視する。少し皺の増えた眦を優しく細め、穏やかにシェリルを見つめていた。
(親父)
 呼び掛けたいが、今は発言の赦されていない彼はただ黙って婚約者と自分の父を見守るしかなかった。
「お茶にしましょう、先生。それからシェリルさんと有人さんも」
 矢三郎が茶菓子を持って現れる。
「わかった」
「ありがとうございます」
 シェリルは微笑み、それを受けた。
 和やかな雰囲気であったが、話の内容は今回のツアーに関して早乙女一座の協力内容を確認するものだった。
「…エデンにはうちのスタッフが居ませんが、直近の船団からスタッフを派遣します」
「距離はどのくらい?」
「この日程では恐らく、二百光年といったところでしょうか。フォールド断層は無いようなので、時間のロスは少なくて済みます。1時間、といったところでしょうか」
「ありがとう。お願いします」
 手持ちのPCで表示したデータと、紙媒体の契約書の内容を矢三郎はシェリルに告げ、彼女はそれを確認する。本来はスタッフがやるべきだろうが、今回の件は全て彼女が一手に引き受けている。
 早乙女一座には、ギャラクシーに在住していたスタッフも居たが、彼らの安否は今もなお分からない。おそらくは。
 だがそれにシェリルも矢三郎も、嵐蔵も触れなかった。

 二人のやりとりを、有人と嵐蔵は聴いているだけだ。嵐蔵の方は時折矢三郎に何事か訊ねられ、それに応えてはいたが。
(プロの表情(かお)、だな)
 ステージで見せるアーティストとしての表情とはまた別に、ビジネスを遂行しよう、という彼女の表情はまた美しかった。
「最終日、地球での公演が終われば真っ直ぐフロンティアへ?」
「ええ。途中、船のメンテにいくつかの船団へは寄るけど」
「わかりました」
 矢三郎は航路図を見ながら告げた。
「では、マクロス7辺りで迎えを寄越しましょう。せめてシェリルさんだけでも早く帰ってきて欲しいですからね」
 そして、一瞬その視線は有人へ向けられた。
「…なら、俺が行く。7なら、恐らくこの時点ではフロンティアから二日ほどで行けるだろう。SMSでメサイアの使用許可を得られれば」
「それがいいですね」
 矢三郎はそう応えたが、
「…無理よ、アルト」
 シェリルは拒む。
「あなたには任務があるでしょう?矢三郎、迎えもいらないわ。シャトルだってバルキリーほどではないけれど、7からフロンティアまでせいぜい一週間よ」
「…この頃はもう、フロンティアでは1年近く経っているでしょう。誰かさんが禁断症状起こしますよ」
「え?」
「兄さん」
 言われようにアルトは眉を顰める。呵々として笑い声を上げたのは、嵐蔵だった。
「…シェリルさん。せめて有人の希望を叶えてやってくれ。そうだな、いっそ新婚旅行の代わりに二人で合流した後ゆっくりすればいいのではないか」
「…!」
 厳格な父がこんな提案をするなんて、あり得なかった。シェリルはどうすればいいのか困ったようにただ俯く。
「…親父」
 久しぶりに、面と向かって息子は父親に呼び掛けた。
「有り難い申し出ではありますが…」
 だがその時、
「矢三郎」
 父は呼び掛けた息子を無視して後継者に声を掛ける。
「手水に行きたいが、連れてってくれるか」
「はい」
 矢三郎も頷いて、嵐蔵の車椅子を押していった。
「チョーズ、って何?」
 シェリルが首を傾げる。
「トイレのことだよ」
「…ああ」
 アルトの説明に、シェリルは納得がいったようだが。
(”後は若いお二人に”ってことなのか…見合いの席なのか、これは)
 アルトとしてはかなり気恥ずかしい。だが、せっかくのチャンスなのだろう。アルトは意を決し、
「シェリル」
 彼女に呼び掛けた。
「何?」
 少し脚を寛がせたシェリルは、小首を傾げて問い掛ける。
(そういえばシェリルとここに来たことはあったけど、彼女が制服で、って初めてだよな。かわいすぎ…って何考えてるんだ、俺)
「いや、あの。…ていうか」
「どうしたの?」
 問い掛けるシェリルは、こちらの決意に気付いているのか居ないのか。今は年相応の愛らしい少女。ステージを魅了し、観客を圧倒する彼女や慈善活動やら事務所の経営などに忙しく立ち回っている時の彼女ではない。
 アルトは隣に座る、彼女の手を取る。
「迎えに行くから」
 もう一度、彼は告げる。
「でも」
 先ほどと同じように、彼女は拒絶の言葉を告げようとしたのだろう。その身体を抱きしめ、アルトは彼女の身体も心も包み込む。一瞬、強張った身体が、やがてゆっくりと腕の中で崩れ落ち、アルトの胸板に身を委ねた。
「迎えに行かせてくれ。先ほどの親父の言葉じゃないけれど、二人になりたいんだ」
 そう告げる。
「…ありがとう。アルト」
 彼女の目には、涙が浮かんでいた。どうして、『ありがとう』なのか、その時彼は分からなかった。ただ愛おしくて彼女の唇に自分の唇を重ねた。
「アルト…」
 長い口付けから解放され、シェリルの双眸は潤んでいた。頷いて、彼女を抱きしめ、ふと座卓の上に目をやると、そこに鎮座ましましていたのは。
「…これ」
 先ほどまで彼女と口付けを交わしていた、その時に置かれたのか。そこにあったのは小さな天鵞絨張りの小箱。
「え、何」
 彼女も気付いてそれに目をやる。いつの間に置かれたのか、驚きと気恥ずかしさで顔を真っ赤に染めている。
「シェリル。受け取ってくれるか」
「…何」
 青い小箱を開けるとそこには、銀色の平打ちされたリング。
「指輪?」
「ああ」
 それは、母の形見。そして、早乙女の家の女達に代々受け継がれてきた物だ。本来ならば、矢三郎の妻に授けられるべき物であろうが。
「これはな」
 アルトは指輪の由来を簡単に説明する。
「母さんや…父の母、祖母や曾祖母たちの物だ」
「それが、どうして」
「だから」
 アルトは指輪を取りだし、シェリルの左手を取る。だがそれは、
「少し、緩いな」
 薬指では、緩すぎてすぐ抜けてしまう。
「ねえ、アルト。これって大事な物なんでしょう?」
 シェリルの声には戸惑いがある。
「受け取れないわ。こんな…」
「だからこそ、だよ」
 アルトはぐっとその手を握る。
「だからこそ。お前に受け取って欲しいんだ」
「アルト」
 ふ、と顔を背けるシェリルをアルトは再び抱きしめる。
「婚約者として…そして。ツアーから帰ったら」
 ぐ、と抱きしめる腕に力を込める。
「結婚して…暫くは二人で一緒に過ごそう」
「……」
「お前は…フロンティアでも、銀河中でも必要とされているから。難しいとは分かっているけど、出来れば」
「アルト」
 少し身を離し、彼女は微笑む。
「そうね」
「シェリル」
「帰ってきたら。アルト、私もあなたと一緒に過ごしたい」
「シェリルっ…!」
 重なった気持ちに、アルトは歓喜する。
「俺は」
 その時、シェリルの唇によって、アルトの言葉が塞がれる。
(ああ、またあの時みたいだ。)
 そう思ったが、あの時とは違う。
 彼女との約束を、誓いをした後での初めての口付け。細い華奢な躰を抱きしめて、シェリルの唇を更に深く、奪う。
「ちょっと…アルト」
 漸く長い口付けが終わり、シェリルに言われて気付く。
 二人のすぐ傍にある座卓の上には、湯気を立てる緑茶と羊羹が置かれていた…。




続きは鋭意執筆中です

テーマ : マクロスF
ジャンル : アニメ・コミック

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Author:Rook
ようこそおいでくださいました。
こちらはマクロスフロンティア感想・および原作とは全く関係のない妄想小話の吐き出し部屋です。
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銀河の妖精至上主義
一応映画が公開されるまでの期間限定ですが、もしかしたら延長もあるかもしれません(笑)
→とりあえず完結編公開まで。

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