スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Eternity

以前一応劇場版第二弾として書いた、どシリアスなアルシェリですがDepartureシリーズに入れました。
外伝ですが。

May'nさんの解説にもありましたが、この時のシェリルさんどういう気持ちだったのか考えると切なくなります。

あ、15Rくらい?大丈夫だとは思いますが念のため。

『永遠』から。


2010/04/18 カテゴリ変更
一部修正






「だってそれ、”スワンソング”ということでしょう?」
振り返った彼女はどこまでも透き通った笑顔で、心底からそれを喜んでいる。今まで観たどの表情よりも美しい、とすら感じたが。
それすらも、赦せなかった。



漆黒の闇の中。

響いてきたのは彼女の歌声。
いつもの力強く、包み込むような彼女の歌声ではない。

誰に向けてなのか、その歌には絶望しかないと感じられた――。
「――!」
叫んだ彼女の名は、その声にかき消される。

何 処 に い る の

此処にいる!
叫んでも、彼女に届いていない。

漆黒に塗りつぶされた空を見上げ、漸く見つけた。

宙に浮かぶ、脆い梯子のような台に支えられた、遥か高いステージの上。
闇の中でなお光り輝くその姿。

もう一度、喉よ裂けよとばかりにその名を呼んでも。
歌い続ける彼女には届かない。
そしてその眼差しの先は、誰を映しているのか…。

翼―メサイアはなく、己が足で駆け出した。
近付けば近付くほど、実は遠く、高いのだと思い知らされてもただ走る。
そして、彼女のいるステージに続く階段を駆け上がる。
それは自分の足が触れる瞬間、崩れ落ちるがそれより先に駆け上がる。

あともう少し、というとき。
「シェリル!」
手を伸ばして叫んだ。
しかしその瞬間、今度は彼女のステージが崩れ。

伸ばした指先はかすりもせず、迷わず自らも身を踊らせた。眼下に広がるのは闇よりもなお暗い海。

そしてそれでも、彼女の歌は止むことなく、スローモーションのようにその身体は墜ちていく。

EXギアの出力を最大にして彼女の下へ舞い降りる。だが、その身に触れようとした寸前。

「――!」
まるでガラス細工のように、その姿が砕け散った。
それでもなお彼女の歌は止まず、それを聴きながら、自らもまた海に吸い込まれていく…。






「――!」
失墜感と、胸を締め付ける恐怖で目が覚めた。
そう。
分かっていた、これは夢だと。

こんなこと、起こるはずがない。
だが、今も尚、恐怖で吐き気がする。毛布を口元に引き寄せ、嗚咽を堪える。そうしながら、視線は寝台にゆっくりと向ける。

寝台に横たわる、美しい人。細い月の明かりがその横顔、頬に射して。
それでも片手でおそるおそる口元に触れ、指先に温かな呼気を感じ、漸く安堵する。

冷や汗をかいたのだろう、全身がベタついている自覚はあったが、それでも彼女を抱きしめた。
「……アルト?」
名を呼ばれて、全身の力が抜けた。
「どうしたの?寝呆けた?」
問い掛ける声に応えることも出来ず、ただ縋り付くように抱きしめた。
「…酷い汗よ。このままじゃ風邪ひいちゃう」
シェリルが身を起こそうとするのを、更に強い抱擁で拒絶する。

此処に居て欲しい。
何処にも行くなと。

彼女にも通じたのだろう。
「…嫌な夢でも視た?」
戸惑いながらも優しく、軽く抱き返してきた。
「…うん」
応えて、身を起こし彼女を見下ろす。
「だいじょうぶ?」
闇の中、月光に照らされてその瞳は星のように優しく彼を照らしていた。
「夢、だったんだな」
「そうよ」
頬に伸ばされた手を取り、親指の腹に、手首にゆっくりと口付けを落とす。
「どんな夢?」
話しちゃえばすっきりするわよ、という声にそれでも黙ってただ口付けを繰り返す。
されるがままのシェリルは、ゆっくりと身を起こして彼を抱き返した。
「だいじょうぶ」
もう一度、同じことを告げる。
「…お前が」
ゆっくり身を起こし、彼は彼女に語った。
"悪夢"の内容を。
歌い続ける彼女に何度呼び掛けても通じず、追いすがっても――。
「で?」
「…間に、合わなかったんだ」
あれは夢で、今、目の前にいる彼女が現実だと分かっているのに。
「間に合わなくて、お前は」
それでもあの圧倒的恐怖に、心を打ち砕かれそうになる。
「お前はっ…!」
叫びだしそうになる唇に、彼女の唇が触れ。やがてそれは深いものに変わって行く。


気付けば、薄く明るい陽が射していた。

…大好きよ
…大好き

柔らかい歌声は子守唄だ。
なんだか照れ臭くなり、押し付けるように強く顔を彼女の胸元に寄せると、唇が柔らかい突起に触れ、そのままちろりと舌先で舐めた。
「えっち」
軽く頭を叩かれ、顔をあげれば彼女の笑顔。
「…いいだろ、イマサラ」
シタんだから、と言えば枕を頭に押し付けられる。
「ばか」
枕を押し退け、彼女と視線を合わせた。ゆっくりと彼女の顔に笑みが広がるのを見届け、
「ごめん」
「もう」
心配をかけたのだ、と改めて実感し、己の気恥ずかしさもだが、それよりも彼女に詫びたい気持ちの方が勝った。
「ごめん」
再び告げて、頬と頬をすりあわせる。
――朝の輝りに照らされれば、闇夜の恐怖は払拭される。
「安くないわよ、ばか」
「ストロベリーパイ毎日焼くよ。とりあえず苺が採れる時期は」
「三日に一度はミルフィーユね?あ、でも和菓子でもいいわよ。たい焼きとか」
くすくす笑うその声に、今度こそ安堵を覚え、再び柔らかなシーツの海に、二人で溺れた…。

「…ねえ」
「ん」
彼女の声で、微睡みから目覚める。
「その、”ワルイユメ”で、私は最後に何を歌っていたの?」
――サイゴに。

「…さあ」
歌手として気になるのだろうか、自分がサイゴ、に歌う曲が。
「何よ、忘れたの?」
「うん。…ワスレタ」
「…そっか」

本当は。

「なんで、気になる?」
問い掛ければ、
「気になるわよ。だって最後に歌うのはね、"スワンソング"ということじゃない?」
「……ふぅん」
――白鳥が、己の最後に歌う最上の歌…。

本当は。

「そうだ、あたしがまだ作ってない、新曲かも?ね、どう?」
「…ワカラナイナ」
「そっかー」
「……シャワー、浴びてくる」
「行ってらっしゃい。朝食はフレンチトーストが良いわ。あ、そう言えばこの前クランから林檎を貰ったわよね。あれも剥いて」
「…分かった」
「ミルク、あっためとくわね」
彼女はガウンをまとい、機嫌良さそうに寝台を降り、自分の部屋に向かう。
「っ」
その背中を見ただけで、またあの夢が蘇った。

本当は。

一度 手にしてみたかったよ

ずっと、あの時の歌が響いていた。

いかないで

熱いシャワーを浴び、あの歌を脳裏から追い出そうとする。

わたしを みて

応えても届かなかったのは。

いま 何処に いる の

彼女が呼び掛けていたのは、
求めていたのは。


それでも。
「ねえ、リンゴはウサギの耳付けてね」
「ああ」
今、この喜びは現実だから。

自分が喪わないように、強く誓った。


そして。
それは、今にして思えば――。

テーマ : マクロスF
ジャンル : アニメ・コミック

■ Comment

非公開コメント

プロフィール

Rook

Author:Rook
ようこそおいでくださいました。
こちらはマクロスフロンティア感想・および原作とは全く関係のない妄想小話の吐き出し部屋です。
最初に来られた方は『はじめに』を一読下さい。
銀河の妖精至上主義
一応映画が公開されるまでの期間限定ですが、もしかしたら延長もあるかもしれません(笑)
→とりあえず完結編公開まで。

Twitter
 
LOVE《リンク》
自分のブックマーク替わりです。皆さん素敵~!
カテゴリ
最新コメント
最新記事
マクロスF~名言集~
ランダムでマクロスFの名言が表示されます。


Spcial Thanks マクロスF
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。