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2. Médecin et acteur

第2話です。
Médecin et acteur

この人書くの苦手なんですが(爆)



 偶然、ということはこの世全てに置いて存在しない、と彼は思う。人が何かに出会うとき、それは須く必然なのだ。
 彼がここを立ち寄ったのも、全くの気まぐれだったがそれもまた必然。来月に迫った襲名の儀式に関しては何の感慨もなかった。ただ自分は「早乙女」の名を次代に次ぐ為だけの存在だと彼は理解していた。
 本来その名を継ぐべき人間は既に別の道を選んでしまい、それなら彼の次の世代にと考えていた。幸いなことに彼はもうすぐ伴侶を娶る。
 その、筈だった。だがそれはかなわなくなってしまった。彼はもはや後継者の正しい血筋を残そうとすら思わないらしい。
 伴侶となるはずの、その女性を喪ってしまったからだ。
 約半年前、地球連邦政府に呼び出された彼女はツアーに旅立ち、その帰りに。
 乗っていたシャトルはデブリ・バーストに巻き込まれ、爆破。前部席にいたスタッフたちは全員脱出ポットで離脱して無事だったが、彼女だけが。

 脱出ポットに乗り込む暇もなく、エンジンの爆発に巻き込まれたのだろう、と事故調査委員会は結論を出した。
 遺体は発見されておらず、だがそれ以降彼女の姿はこの銀河から消えた。
 誰も、それを信じられなかった。彼女に近しい者はみな諦めていなかったが、もはや認めざるを得ないほどの月日は経ってしまっている。

 それが。

 この場所「アクショ」を歩いていたのは、今度この船団で行われる、襲名後初歌舞伎公演ツアーの打ち合わせでシティに来ていたのだが、「彼」が嘗て暮らしていたこの場所に興味があったから、わざわざ足を延ばしたのだ。
 「彼」。ただ生きているのに必死で何もない、空っぽの子供だった自分に、希望と生きる力を与えてくれた。何よりも、芸の素晴らしさを教えてくれた。その出逢いこそ運命だったのだろう。
 そして彼は今、「歌舞伎役者」として此処に居る。
 その感慨に耽りたいわけではなかったが、この道を歩いていて、そしてその歌を聴いた。
 女性で彼の、しかも「DYNAMITE EXPLOSION」を歌える人物は早々いない。彼女が彼の曲を歌ったのを聴いたことはない。そして、彼女の声だと思うにも、声質が変わってしまっていた。
 確かめたくなり、彼女がいたと思われる部屋の近くで気配を殺し、身を潜めていた。
 そして、見つけた。
 嘗ての姿とはまるっきり変わってしまったが、彼女だと分かった。
 あの時と同じように、病に冒され体力も殆ど残っていないことは一目瞭然で。だがその場で名乗りを上げて再会を果たそうとしなかったのは、今彼女と自分が接触すれば今度こそ彼女を永遠に喪うであろうと危惧したからだ。だから確かめるため、此処に来た。
「彼女のことで、あなたに確かめさせていただきたい」
 やっと通された部屋で、その部屋の主であろう老人に尋ねた。
「誰のことだね」
「先ほどこの部屋を出た女性のことです。彼女は誰なのか、いえ、ここでは何という名前なのか」
「…歌舞伎さん」
 老人は彼のことをそう呼んだ。
「それを知ってどうする」
「おそらく彼女は、私たちが探していた人物です。彼女を連れ戻すために」
「…お前さん等がどんな人間か知らないが」
 ドクは先ほどの封筒を懐にしまった。目の前にいる人間は、少なくとも彼女の以前の関係者だとはわかっていたが、
「見ず知らずの人間に、友人のことを勝手に喋るとおもうかね」
 と、突っぱねた。
「…それなら、彼女にはどこで会えるのかお教え願いたい。彼女は歌手なんでしょう」
「……」
 この異形の異邦人には、妥協するつもりがあるらしい。「7thMoon」と、短く告げる。
「彼女のステージは明日の晩、21時からだ」
「ありがとうございます」
 短く礼を言い、暇を告げる。そして、
「時に、その歌手の名はなんと呼べば良いのですか」
 と、尋ねた。
「ミシェル、だ」
「…”ミシェル”」
 どことなく感慨を覚えたように彼は呟いて、そして立ち去った。ドクはそれを見送り、深いため息とともに再び椅子に腰を下ろした。
 ミシェルにとって彼がどういう存在か。少なくとも自分より彼女を助ける努力をするだろう。それを彼女が受け入れるかどうかわからないが、あの店でならグレイがいる。もし何かあれば、彼が彼女の望みを叶えるだろう。



 ミシェルとの契約を更新し、継続するか可能ならば専属歌手にすること。

 その指示をオーナーから受け、グレイは張り切っていた。指示がなくとも自分から要請しようと思っていたことだ。彼女がずっと此処で歌い続ければ否が応でも彼女の名声は高まり、いずれは大きなステージで歌うことになるだろう。かつてのバサラのように、船団中に愛される歌手として。
 それはとても誇らしいことで、彼女にはそれがふさわしいと本気で思った。

 が。
「話は嬉しいけど。継続は出来ない」
 彼女はきっぱりと拒絶した。
「…ミシェル」
 がっくりと肩を落とす。更に、
「来週にはこの船団も発つよ。私は旅を続けなきゃいけないんだから」
 そう告げられて、グレイは眉を潜めた。
「…バサラを探すためか」
「そう」
 マクロス7のヒーロー、バサラが行方不明になってから数十年経つ。一部の熱狂的なファンが未だに彼の行方を探しているとは聞いていたし、彼女自身も初めて会った日、そう告げていたが、グレイは今の今まで忘れていた。
「なあ、ミシェル。これはオーナーからの要望からでもあるが、何よりも俺の頼みだ」
「頼み?」
ミシェルの返答はそっけなかった。
「契約は契約だ。それ以上は無理。留まるつもりはない」
「ミシェル」
 紛いもしない拒絶に、グレイの声は弱くなる。
「俺は…」
「グレイ」
 ミシェルは立ち上がった。
「今日と明日で、私のステージは終わり。今まで世話になった。ありがとう」
 背中越しにそう告げ、ミシェルはステージに向かう。今夜はアギレイが前半で、ミシェルが後半を努める。グレイもまた、彼女たちの歌を聴くため、店に出た。そしてそこで、いつもステージから一番遠いドクの定位置、その隣に見知らぬ異形の男を見つけ、眉を顰めた。
 彼の長年の経験が、こいつはヤバい、と告げている。だが堅気ではあることに間違いはないようなので、その男を観察しやすいよう少し離れた位置に座る。本当はドクと話がしたかったが、ドクはその男と何か話し込んでいた。
 そしてアギレイの歌が終わり(最後のInfinityはグレイにとってあまり聴きよいものではなかった)、アギレイがステージを去ると、彼女が現れた。
 途端に、ステージに向けて客達の叫びが響く。
「ミシェルー!」
 男だけでなく、女達も彼女の名を呼び、熱狂する。そして彼女が歌い始めるとまた、新たな熱が生まれ、観客もその流れに一体となり、大きなうねりの中に巻き込まれる。
 その、心地よい酩酊感にも似た感覚。
 ここまで盛り上げることができるのはミシェルしかいない。ドクも巻き込んでもう一度説得しよう、とドクへ視線を向けたとき、異変に気づいた。
 ドクの隣にいた男が、いなくなったのかと思ったのだ。だが姿はそこにある。完璧なほどに気配を消し、ステージを見つめている男にグレイは寒気を覚えた。
(奴の狙いはミシェルだ)
 根拠のないただの勘だが、そう感じた。ステージのミシェルは気付いていない。グレイはそっと席を立ち、先に控え室へ向かう。ステージではミシェルが3曲目を歌っていた。グレイも好きな「Angel Voice」を。




3.Elle】へ続きます

テーマ : マクロスF
ジャンル : アニメ・コミック

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銀河の妖精至上主義
一応映画が公開されるまでの期間限定ですが、もしかしたら延長もあるかもしれません(笑)
→とりあえず完結編公開まで。

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