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Indice

タイトルが相変わらずいい加減で済みません。

うーんどうしようかな




Indice


「兄さん、その服装は」
 久しぶりに出会った兄弟子は和装ではなく、Tシャツにジーンズという出で立ちだった。
「普段の格好では、ここで目立ちますからね」
「…確かにな」
 逆に不釣り合いに感じる上、何だかいろいろ間違っているような気がしないでもないが、初対面のクランは特に何も感じていないようなので、そういうものだとアルトも納得することにした。
「おい、アルト、紹介しろ」
 久しぶりの再会を、そのクラン――幼い少女の声が破った。
「おや」
 まるで今その存在に気付いた、というように矢三郎は目を瞠った。
「兄さん、こちらはクラン・クラン大尉。クラン、この人は俺の兄弟子の」
「早乙女矢三郎と申します」
「ああ」
 クランはそれで得心がいったようだった。
「私はクラン・クランだ。シェリルの友達だ」
 軍属の地位ではなく、彼女はそう言って自己紹介し、手を差し出す。
「そうですか。宜しくお願いします」
 矢三郎は差し出された手を握り返した。
「それで、ヤサブロー。シェリルはどこに?」
「それが…事務所の人間を使って探してはいますが、見つかりません。監視カメラシステムも、その姿をとらえることはできないようです」
 ここ、”アクショ”にも監視カメラシステムはあるが、あまりにもお粗末すぎる物だ。だからこそ、不法滞在者を初め色々な人々が紛れ込んでいる。
「彼女の知り合いは」
「一人、医者に会いましたが。滞在先を知らないそうです」
「…そうか。でも虱潰しに当たる時間はないな。まずはその医者のところへ行くか」
「そうですね」
 クランは頷いたが、
「アルト、お前はここで待機してろ」
 振り返ってアルトに告げる。
「ちょっと待て!ここに来て何でなんだよ!」
 当然がごとく、彼が抗議の声を上げる。
「馬鹿」
 無碍もなく言い捨てた。
「お前みたいなのを連れて歩いていたらあっと言う間に噂になるだろうが。”フロンティアの英雄”は、今やどこの船団でも顔を知られているぞ。髪型が変わったとはいえ、観る人が観たら気付くだろう」
「……」
 思わず彼は沈黙する。マスメディアの露出は避けたかったのに、フロンティア政府が彼を英雄としてまつりあげ、フロンティア内部のみならず、他船団にまで顔が知られてしまった。だからこそランカを守ることが出来たわけだが。
 そして彼は現在、あの時とは違って髪を短く切っている。が、顔自体はどうしたって目立つだろう。役者として気配を消す訓練もしているが、それを発揮できるほど今は余裕がない。
「お前がここにいることが、万が一シェリルに知られてみろ。もしかしたら、ライブにも出ずにまたシェリルは逃げるかもしれないだろ」
「シェリルは俺から逃げたって、クランも思うのか」
 クランはしまった、とばかりに一瞬顔を背けたが、
「我々から、だろうな。見つけたら一発軽くひっぱたいてやる」
 そう言って、矢三郎を促して出ていった。
 アルトは一人、取り残される。
――アルト。
 思い出すのは、柔らかな声。
 甘い、香り。
 そして自分に向かって微笑む、その笑顔。
 なのになぜ、彼女は去ったのか。
 彼女が生きていることを信じていたが、姿も変え名前も変えていることを知ったとき、喜びよりも怒りが沸いた。
 
 ――そうまでして自分を拒むのか、と。
 
 愛憎は一体だと、自らも演じて分かっていたつもりだったが、初めて実感した。愛する男に裏切られ、憎しみのあまり化け物になってしまった姫の気持ちが、今なら分かる。
 
 愛している。
 だからこそ、赦せないこともある。
 理不尽だとわかっているが、それはどうしようもない。
 閉じこめて、抱きつぶして、もう二度と離したくない。
 彼女の寿命が近い、というなら。それならばなおのこと、何処か誰にも知られないような、小さな船団か惑星で、その最後の時まで二人きりで過ごしたい。
(こういう、俺の感情が悪かったのだろうか)
 独占欲とか嫉妬などは、それまでは芝居だけのこと、他人話だと思っていたのかも知れない。彼女と結ばれることによって初めて、自分の中にそんな感情があったのだ、と気づいた。
 それが、彼女の負担になっていたとしたら。
「そうなのか、シェリル」
 確かめたい、確かめたくない。
 二律背反に、アルトの心は千々にかき乱される。
「矢三郎、そちらのお嬢さんは」
 戸惑いを隠せないドクの声に苦笑しつつ、矢三郎はクランを紹介した。もう二十を過ぎたというのに、いっこうに幼い外見のままのクランに、ドクは「変わった症状だな」と呟く。怒りを押しやり、クランは訊ねた。
「シェ…ミシェルは、病気なのか」
「おそらくはV型感染症の末期、と思われる。進行を遅らせる薬は処方しているが…」
「カルテを見せてくれないか。私も一応医師の資格がある」
 クランが提示したIDカードをみやり、
「プライバシーの侵害になるが…」
 と、呟きながらもドクは電子カルテを差し出した。それを見て、途端にクランの表情が曇った。
「大戦前に見たのとほぼ同程度、いや、悪化しているな、感染率が異常に高い数値だ。どうして…」
 呆然と呟く。そこに記された数値を見る限り、血液中から検出されている毒素もウィルスの量も、V型感染症の末期患者そのものだった。正直、生きているのが奇跡だといえる。
「あれから…快復していたはずなんだが」
 思わずそう呟くと、
「快復する方が不思議だと思うがね」
 クランの手からカルテを取り、ドクが答えた。
「通常、V型感染症に罹患した患者は、初期症状が出た時点で対応すれば問題ないが、それを過ぎたが最後、ウィルスは脳内に定着、宿主が死ぬまで毒素を生成し吐き出し続ける。快復した例があるとすれば、一件限りだな」
「……」
「ギャラクシー出身の歌姫、”シェリル・ノーム”だけだと聞いたぞ」
「……」
 沈黙したクランと矢三郎を見やり、ドクは自らの予想が正しかったことを改めて確認した。
 そして、ベッド下にあった箱、金庫の鍵を開け、そこから数枚の書類をクランに差し出した。
「これは?」
「ある罹患者のレポートだ。それによると、”ある計画のため”、”彼女”はあえて感染させられたらしいな」
「コードネーム”プロジェクト・フェアリー”だと!?これは、グレイス・オコナーの。って、待て…!」
 それは、クラン自身も嘗て目を通したことのある論文データだった。だがそれは、その時よりも精密で、そしてそれよりも恐ろしい内容が書かれている。だが。
「なんで、貴方がこれを!」
「…インプラント法が施工される寸前まで、わしはギャラクシーにいたからな」
「……」
「ドクター・マオの娘夫婦、シェリル・ノームの両親を初めとする人権擁護派の議員達が暗殺される前に、わしはギャラクシーから離れた」
「……貴方は」
 クランはまじまじと目の前の老人を見つめた。
「ギャラクシーの中でも、インプラントに反対する医師は決して少なくはなかった。だが」
 寧ろ、”あの事件”以前はそちらの方が多数派だった。だが、彼ら人権擁護派の議員や医師達が一晩で秘密裡に暗殺されると、その声はかき消された。最初からなかったことにされたのだ。
 それに、彼は医師としてのみならず、それなりの発言権は持っていた。そうなる前に地球連合政府なり、他の船団なりに事実を知らせ、ギャラクシーの、グレイスの野望に介入も出来たはず。
 だが。それを行えば。
「ずっと、逃げ続けていたというのにな。まさか、こんなことになるとは思わなかったよ」
 自嘲気味に笑う老人に、
「今からでも遅くないはずだ」
 クランは告げる。
 ドクは吐息と共に告げた。
「もう、遅い。彼女自身からも言われたが、元々手遅れだったのだよ。色々とな」
 先ほどクランが目を通したカルテのある数値を指し示す。
「V型感染症は完治したとしても、既に様々な合併症を併発していたらしい。元々体力が弱っていたところに、そうとう無理をしたのだろう」
「……」
「本人もおそらく、治っていると思ったのだろうが、彼女自身気付かないところで別の症状が進行していた、顕著なのは、ここ…左咽喉部から内耳にかけて侵略している癌細胞だ」
「……ドク」
 思い沈黙を破ったのは、矢三郎だった。
「彼女の余命は」
「…もって、数週間だろうな。実のところ、今日明日にでも倒れてもおかしくない。症状は抑えられているが、今歌えるのが不思議なくらいだ、立っているのも相当厳しいはず」
「そんなことって」
「彼女は、明日にでもここを出てほかの船団を目指すそうだが。フォールドしてみろ、そのままエーテル体は身体を出たまま、帰ってこれなくなるぞ」
「……」
 フォールド時、人間の精神、俗に言うエーテル体は半ば肉体を離れているという。時折、そのまま目覚めないケースもある。体力が弱った人間の場合は尚更その危険があるため、通常フォールドは出来ない。だが、それらの管理が杜撰な裏の航路であれば。
「わかった」
 頷いて、更に問いを重ねた。
「彼女のライブは、何時からだ?」
 そう、クランはドクに訊ねた。
「今日は19時からだ。そのラストに、”シェリル・ノーム”の曲を一曲だけ、披露するらしい」
「ありがとう、世話になった。では、またライブで」
 そう告げて、クランは部屋を出る。矢三郎もそれに続く。そのまままっすぐアルトの待つホテルには向かわず、クランは矢三郎を誘ってある喫茶店に向かった。
「……アルトを連れて行かなくて正解だ」
「そうですね」
「……」
 凪いだ矢三郎の返答に、クランは言葉を続ける。
「…どうすればいいのか、わからないんだ」
 ――”ミシェル”と、彼女は名乗っていた。嘗て失った、クランの想い人。そしてまた、彼女も失われようとしている。
「彼女が楽屋に来たところを押さえますか」
「歌う前に?それは、出来ないだろう」
 そう言えば、矢三郎は目元を緩めて微笑む。根っからの芸人である彼女から”歌”を奪うわけにはいかない。
「あなたは、どうしたいと?」
「……」
 問われたクランは、目を伏せる。自分達だけでなく、彼女を想う人たちは大勢いる。特に、あの緑の髪の少女。だが知らせたところで間に合うわけがない。

テーマ : マクロスF
ジャンル : アニメ・コミック

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Author:Rook
ようこそおいでくださいました。
こちらはマクロスフロンティア感想・および原作とは全く関係のない妄想小話の吐き出し部屋です。
最初に来られた方は『はじめに』を一読下さい。
銀河の妖精至上主義
一応映画が公開されるまでの期間限定ですが、もしかしたら延長もあるかもしれません(笑)
→とりあえず完結編公開まで。

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