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Phase finale 2

2、です。

長いですよー。お時間のある時にどうぞ。
場面転換が多いので、わかりにくい部分があるかと思います。
読み辛いとか、お気づきの点があればご指摘、お願いします。

それでは続きからどうぞ。




-2-

「遅かったじゃないか、ミシェル」
 焦ったように声をかけてきたのはグレイだった。
「悪い」
 軽く応えたミシェルの顔色は悪い。
「大丈夫か」
 グレイが思わず声をかけるが、
「何が?」
 ミシェルはあっさりそう告げると、楽屋の扉を開ける。
「遅いぞ、ミシェル」
 バンドマンの一人が苛立ったように告げた。FIREBOMBERの曲なら毎日のように練習しているから問題ない。だが、今日初めてミシェルが披露するシェリルの曲が何の曲なのかは、知らされていない。当日早く来て打ち合わせしようと約束をしていたのだが、もうリハをやる時間は殆ど無い。ぎりぎりだ。
「すまない」
 眉を顰めるバンドマン達を尻目に、シェリルはステージに立つ。
「曲目リストは、これで頼む」
 そう言ってリストを渡した。
「…おい、これ」
「なんだよミシェル、シェリルの曲はやはり止めるのか?」
 リストに載っている曲は全てFIREBOMBERの曲のみ。肝心のシェリルの曲はない。
「やるよ」
「じゃあ!」
 何をやるんだと息巻くバンドマン達に、彼女は告げた。
「この曲は楽譜がないんだ。アカペラでやる」
「…!?」
 一瞬の沈黙の後、彼らはいきり立った。マクロス7はFIREBOMBERの本拠地であるが、他のアーティストの人気も強い。彼らバンドマンとて、シェリル・ノームのファンも多く、アギレイがシェリルのコピーを盛んにする、ということもあってシェリルの曲で弾けない物はない、という自負があった。
 それなのに、少しばかり上手いだけの、新参者の歌手が彼らをないがしろにし、アカペラでやるというのだ。
「ミシェル」
 一人が叫びかけた時、
「…教えるわけに、いかないわよね」
 冷ややかな女の声がそれを破った。
「アギレイ、お前…」
 彼女の出番は後半だ。そういう時は大概ミシェルや他の歌手が捌けてから楽屋に顔を出す、というのに珍しいこともある、そう思ったのだろう。
「それより、どういうことだ」
 話を聞いていたグレイが訊く。不敵に笑う、アギレイと沈黙の中に表情を封じたミシェル。
「あの日以来、封印していた曲だから。でしょ?」
「ミシェル?」
 グレイの声にも彼女は反応しない。
「なんだ、そりゃ」
 誰かが呟く。
「シェリルのメジャーな曲を、あなたは歌うわけにはいかない。だから、マイナーな曲を選んでいるはずよね?」
「……」
 アギレイの双眸が真っ直ぐにミシェルを見抜く。その視線を受けても、ミシェルは沈黙を守ったまま。
「歌うわけにはいかない…?それってどういう?」
「貴女はいつも拒んでいた。シェリルの歌を」
 アギレイはミシェルに向かって告げる。
「声域に合わないからだけど?」
 笑みさえ浮かべてミシェルはそう応えたが、グレイは眉を顰めた。それはアギレイに対する皮肉なのだろうか。
「そうじゃない、でしょう?」
「……」
 アギレイは腕を組み、
「あなたがシェリル本人だから。歌えば正体がばれるでしょ?それを恐れた」
「……!!」
 顎が外れる、かと思うくらいグレイを初めバンドマン達は呆然とする。アギレイの言葉は突拍子もないように聞こえるが、だが。
「ばかばかしい」
 ミシェルは吐き捨てた。
「私が本当に”シェリル”なら、何を歌っても、FIREBOMBERでも、シェリルだって分かるんじゃない?あなたたちはプロなんだから」
「ミシェル」
「時間がない。リハ始めよう」
「あ、ああ」
 ミシェルはアギレイとグレイから顔を背け、バンドマン達に声をかけた。彼女の遅刻のお陰で、確かに本番まで時間がない。
「…アギレイ」
 呆れを含んだグレイの声。
「…あの時は、だってそうかと思えたのよ」
 だが、冷静に振り返ってみれば、確かにミシェル自身の言うとおりだ。姿形が似ていたから、と言ってもプロの耳には通じない。
(でも、あの時)
 残されたヴィジョン。あの廃墟で歌う、シェリルの姿にミシェルの姿がダブったのだ。
(だがそれも、思い込みだったというわけ)
 シェリル生存説はあちこちで囁かれている。だが、本当に彼女が生きているというのなら、今もその歌声は銀河中に響いているはずだろう…。
「なあ、それよりアギレイ、お前客席観たか?」
 ミシェルの時ならともかく、他の歌手が出ている時、時々アギレイも客席で聴いていた。
「いいえ。今日はまだ向こうに行ってないわ」
 おそらく、ミシェルが最後の出番だと宣言したお陰でいつにも増して満員御礼、というやつだろう。今更それをグレイが気にするのか。
「そうか、いや、実はな」
 グレイが言葉を告げようとした時、その客席が響めいた。
「ミシェル!」
「ミシェルさまぁ!」
「ミシェール!!」
 シェリルがステージに立ったのだろう。グレイもアギレイも、客席に向かった。

 カウンターに座る老人の隣には、若い男の姿があった。
「今夜はまた、一段と凄まじいな」
「最後、だそうですからね」
 答えた男は細い目をますます細めて、背後の気配を探る。
(随分と下手になりましたね)
 観客で溢れかえる客席、その一番奥に感じられる二つの気配。一つは、青い髪の少女、もう一つは彼にとって馴染んだ青年の気配。周囲の雰囲気に馴染ませようとしているのだろうが、観客が興奮し、熱気で溢れかえっているおかげで、彼女へ届いていないだろう。
 だがこれが、普通の店であったなら勘の良い彼女は直ぐに気付く。彼がその気配を把握するよりも先に、逃げ出してしまうだろう。

「ありがとう、みんなー!」
 ミシェルの声に、観客が応えた時、その気配は再び震えた。


 例え、他の者の耳を誤魔化すことが出来たとしても、紛れもない彼女の声だ。
「…落ち着け、少尉」
「了解です、大尉」
 お互い階級で呼び合うのは、動揺を抑えるため。そして万が一、彼らの身分を周囲に知らせないため。こんな喧噪の中でも、種族によっては彼らの会話を聞くことが出来る。
「じゃあ1曲目、”突撃ラブハート”!いっくぜぇぇぇ!」
 観客のボルテージが一気に高まる。そして、
「俺の歌を聴けぇぇぇぇぇ!」
 ミシェルの叫びに、
「ミシェル-!」
「突撃ラブハート!」
 観客達がめいめいに叫ぶ。そして、ステージは始まった。
「凄いな」
 クランが感嘆の声を漏らす。彼もただ、頷いた。
 姿も声も変えたとはいえ、それでも彼女は一流のエンターティナーだ。台詞、視線、頭の先からつま先の動きに至るまで、観客の気持ちを掴むために、見事にコントロールしきっている。今はただ、そんな彼女の芸を、彼女が懸ける、その命の輝きに魅入っていた。

 アンコールに応えたのは、一度。だが、
「これが、最後だから」
 ミシェルの声に、観客達からブーイングが上がる。
「ミシェル、シェリルの歌は」
「そうだ、今夜はシェリル、やってくれるんだろう!?」
 観客の声に、バンドマン達は困惑を隠せない。だが、
「ああ。…苦手だから本当は歌えないけど、これなら多分。でもマイナーすぎて知らない人が多いと思うけど」
 それでも、観客達が期待で沸き返る。
「…!」
 矢三郎、アルト、クランは身を固くした。だがその様子に、周りの観客も、ミシェルも気付いていない。
「じゃあ…これが最後」
 ミシェルはマイクをスタンドに戻す。彼女はいつもハンドマイクを使っていたのに、そのマイクを手放すと言うことは。
「…有り難う、セブン。これが正真正銘、最後の曲。…”妖精”」
 ゆっくりと、ミシェルは歌う。その旋律、その声。声質は違うと言え、やはり――。
「ミシェル」
 グレイの隣で、アギレイが呟く。やはり彼女は。
「ドク?」
 グレイが何故か、ドクが居るはずのカウンターに顔を向ける。だが、ここからでは客に阻まれてその姿を見ることは出来ない。
「グレイ、どうし」
「…しっ」
グレイはアギレイに向かって、唇に指を立てる。
「グレイ?」
 ミシェルの歌に聴き入って、彫像のように固まった客達を押しのけ、カウンターに向かうグレイの後を、アギレイも追う。


「ドク」
 声をかけられて、赤ら顔の老人は振り返った。
「グレイ、と、珍しいな、アギレイまで」
「なぁドク、あの人は今日来ていないのか」
 この近辺では見かけない、ただの旅人とも思えないあの恐ろしい男。何が恐ろしいか、姿を視認していてもその気配を感じることが出来ない、というところだ。そして彼の目的は、ミシェルだろう。
「あの男、って?」
 アギレイが訊ねる。
「…歌舞伎さんなら」
 ドクが告げた。
「先刻まで居たが、帰ったようだ」
「帰った?」
「グレイ」
 まったく事態が分からないアギレイが訊ねる。
「ああ、すまない」
「ミシェルの旧知らしい人物がいたんだ、先ほどまで」
 答えたのはドク。
「ミシェルの知り合い?歌舞伎、と言ったわね。もしかして早乙女の?」
「知っているのか?」
 今度はグレイがアギレイに訊ねた。
「フロンティアの芸能界を全面的に支援しているのが、銀河歌舞伎の早乙女家でしょう。シェリル・ノームの婚約者はそこの関係者だった。そうよね?」
 最後はドクへの確認だった。ドクは直ぐには答えず、「出よう」とだけ、告げ、店を出、脇にある細い路地に入った。
「どういうことだ。あの男が早乙女家の人間だとして、ミシェルの関係者だとしたら」
「やはり、ミシェルはシェリル、ということよね」
「恐らくな」
 外の気温は廃棄熱などでそれほど寒くないはずなのに、ドクは身を震わせながら告げる。
「ミシェルがシェリル、なら…なんでこんなところに」
「……」
 半年前、事故死した筈の彼女が、どうして無名の歌手として、旅を続けているのか。
「そのことについては、私からお話ししましょうか」
「!」
 彼らの背後には、あの「早乙女」が立っていた。




とりあえず、次でこの章は終わります。

テーマ : マクロスF
ジャンル : アニメ・コミック

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Rook

Author:Rook
ようこそおいでくださいました。
こちらはマクロスフロンティア感想・および原作とは全く関係のない妄想小話の吐き出し部屋です。
最初に来られた方は『はじめに』を一読下さい。
銀河の妖精至上主義
一応映画が公開されるまでの期間限定ですが、もしかしたら延長もあるかもしれません(笑)
→とりあえず完結編公開まで。

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