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劇場版最悪予想展開《後編》

読んでしまったら自己責任でお願いします。


 ランカは突然空中に投げ出されたような衝撃を受けた。
 あの時、シェリルやアルトと意識を共有した、フォールド空間に居るのだと感じたが、そことはまた違う感触。あの時はあんなに近くに、いや同じ意識を共有していた筈のシェリルが今は遠い。
「シェリルさん!」
 まるで蜘蛛の糸のように細く、頼りなく光る糸が見えた。そうだ、以前はあの糸が無数に繋がっていて、太く力強く自分たちを繋げていたのに、今はもう、細くて儚い糸が数本しか見えない。何とか辛うじて残っているそれを追いかけると、眼下にはネネの肩に乗ったクランの姿が見える。
(駄目だ…きっと追いつかない、間に合わない)
 何に間に合わないのか、はっきりと意識したくはなかった。糸の先を追い、ランカは更に上空へ舞い上がる。そして、漸く見えたのは。

 アルトの隣で、飛んでいるシェリルの姿。

「シェリルさん!」
 叫ぶと同時に手を伸ばす、追いついた、と思った。だけど伸ばした手はシェリルに触れることができず、その姿をすり抜ける。
「ランカちゃん」
 シェリルは振り返り、優しく微笑った。
「シェリルさん、駄目だよ、戻って」
 そう言えばシェリルは静かに首を振った。そして、隣を飛ぶ、何も気づいていないアルトを見つめて。
「貴女が居るから、大丈夫ね」
「…駄目だってば!」
「行くよ、シェリル」
 今まで気づかなかったが、その声に意識を向けると、シェリルの背後には、
「ミシェル君…!?」
 何百光年先に喪われたはずの彼がどうして、此処にいるのか。その事実にランカの声は凍った。
「あたしのエスコートができるなんて、光栄だと思いなさい」
「肝に銘じておりますとも、女王様」
 まるで、いつも学校でみていたようなやりとり。だがそれで、ランカは呪縛から解放され再び叫んだ。
「駄目だよミシェル君!クランちゃんはどうするの、もうすぐ此処にくるよ!」
 その声に、ミシェルの柳眉が曇った。だが、
「…あいつに、よろしく伝えてくれ」
 そう、優しい笑顔で彼は告げた。
「イヤだよ!」
 そう叫んだ時。
「…シェリル?」
 アルトが腕の中のシェリルに語り掛ける。
「アルト君」
 ランカの声は、やはり届かない。
「眠ったのか、シェリル…?」
 問いかけるアルトの声は震えていた。
「…ランカちゃん」
 ふわり、と優しくシェリルはランカを一瞬だけ抱きしめる。そしてミシェルの手を取った。
「シェリルさん!」
 手を伸ばしても叫んでも届かない。
「ミシェル君、駄目だよぉ、シェリルさんを連れていかないでよ!!」
 そう叫んでも、二人は静かに微笑むだけで、シェリルが手を振った。その瞬間、アルトの耳に揺れていたフォールドクォーツが砕け散ったが、アルトはそれに気付いていない。ランカは必死で砕け散ったフォールドクォーツのかけらをランカはかき集めようとするも、それに触れることすら叶わない。それはまるで、雪の花のように掌に触れた瞬間、溶けてしまう。
「あ…ああ…」
 そして、全てが光の結晶と変わり、宙に溶けていった。

「お姉様、アレを」
 ネネに言われるまでもなく、クランは気付いていた。上空でただ、その身を宙に留め、凍り付いている男の背中を。
 その腕の中にいる、シェリルの姿はアルトの背に隠れて見えない。だが、嫌な予感と共に、クランは声を掛ける。
「アルト」
 ゆっくりと、彼は振り向く。そして大事な宝物をしまいこむように、ぎゅっと腕の中の女性を、折れそうな程に強くきつく抱きしめる。だが彼女は、何の反応も返さなかった。
「…シェリル」
 クランが小さく呟いた。

 ネネは口元に手を当て、息を呑む。見開いた目から、泉のように雫が浮かび上がった。
「…帰ろう」
 アルトが、腕の中のシェリルに語りかける。
「帰ろう、シェリル。俺たちの――」
 再び彼は上空を見つめた。
「俺たちの、空へーー」

「ランカ、ランカ」
 狂ったように妹の名を呼ぶブレラを苦痛の表情でオズマは見つめる。
「落ち着け。気を失っているだけだ」
 脈を取り、カナリアがそう告げる。急遽呼び出されたパイロットたちがEXギアを装着し、周囲はあわただしくなった。
「一刻も早くシェリル・ノームとアルト早乙女中尉の身柄を確保、そのまま病院へ」
 女性士官が指示を出し、それに従って三人の隊員がEXギアで宙を舞う。
「…待って」
「ランカ!」
 突然、目覚めたランカがそう叫んだ。
「…アルト君は、もうすぐ戻って来る筈だから」
 カナリアに助けられゆっくりとその身を起こすも、項垂れたままランカは告げる。
「だからそれまで、二人にしてあげて」
 先程まではシェリルを戻そうと焦っていたのに、今はその声は凪いでいて、周囲の者は彼女の感情が読めない。だが、ブレラがそっと彼女の体を抱き寄せると、ランカは堪えきれず嗚咽を漏らした。

 ネネやクランに導かれるように、アルトがシェリルを抱いたまま地上へ降りてきたのは数分後だった。
 黙したままのアルトの気迫に圧され、誰も声を発するどころか動くことすらかなわなかった。ただ一人、ランカだけが彼の元に歩み寄り、少し距離を置いて正面に立つ。
 足下には名の知れぬ、美しい草花が咲き誇っていて、その上にアルトはシェリルを横たえた。
 軍人たちが駆け寄ろうとするのをカナリアが片腕をあげて制す。

 集まった人々は、まるで舞台の幕が下りた観客のように、ただ黙って彼らを見守ることしかできないでいた。


 それから数年。
 惑星探査とフロンティアの復興作業は同時に行われ、軍部に一時身柄を拘束されていたランカも程なく解放されて、以前のシェリルがそうしていたようにチャリティーライブで多忙な日々を送っていた。
(みんなのために歌うこと)
 それがランカの仕事であり、シェリルの遺志だった。
 人類にとって「裏切り者」に見える行動をとってしまったランカであったが、彼女の本当の目的がバジュラと人類を理解させようとしていたこと、彼女を裏切り者に仕立てたのはギャラクシーと三島一派だということが証明され、まだ若干の凝りはあるものの彼女はフロンティアの人々に受け入れられた。
 そして、シェリルの遺書も、彼女の無実を証明していた。
 軍と、早乙女家に2通同じ遺書を彼女は託しており、それが双方の弁護士によって開封され、照合されるとそこにあったのは驚くべき内容だった。
 病に倒れながらも彼女自身独自で調査していたのか、グレイス・オコナー大佐を中心としたギャラクシーによる全銀河支配計画の一端についての内容。
 自分が亡き後、ギャラクシーから同行していたスタッフの処遇について、エルモ・クリダニク社長の元で働かせてほしいとの懇願、そしてなによりも。
 ーーランカ・リーを守り、彼女に歌わせること。
 そう書かれていた。

(歌うよ、あたし。シェリルさん)
 かつて、その歌は”たった一人のために”歌っていた。でも今は。
(シェリルさんに歌えば、みんなのために歌えるよね)
 いつか、届くことを祈りながら今日もランカはステージに立つ。
 その歌はいつしか、フロンティアを越えて全銀河に響いていた。

(良い歌だ)
 野外ステージから遠く離れた、展望公園。風に乗ってそこにもランカの歌声がかすかに響いていた。
 それはシェリルが、ランカの為に書いた曲。シェリルはランカには遺言を残していなかった。その代わりに、「ランカちゃんへ」と書かれた封筒には、5曲の新譜と、歌詞が入っていた。そして、全ての曲の著作権及び歌唱権をランカに託すよう弁護士を通じて、シェリルはエルモに指示を出していた。が、ランカはあれ以来、シェリルの曲を歌っていなかった。
 ファンからも、ランカがシェリルの唄を歌って欲しいと望む声があるにも関わらず。

 男は一人、EXギアを身にまとい、バルキリーの傍らにたたずんでいた。
(俺も行くよ、シェリル)
 胸元のお守り袋を握りしめる。
 そこには、彼女の遺髪が納められている。
 ヘルメットを被り、コクピットに乗り込んでバイザーを降ろす。その時、キュイイ、と、緑色のバジュラが飛んできた。
「お前も、行くか」
 アルトが声を掛けると、キュウイ、とアイ君は頷くような仕草を見せた。

 バルキリーは少年が憧れ続けた、大空を、大気を抜け、真空の宇宙(そら)へと。



「…今日はありがとう」
 アンコールの曲を歌い終え、ランカはゆっくりと口を開く。
「最後に、もう一曲歌って良いですか?」
 わああ、と、客席は喜びの声で沸いた。
「…今日は、大事な日だから。どうしても、歌いたい歌があります」
 しん、と静まりかえった客席に、ランカの声が響く。
「シェリルさんと、あたしが。ステージじゃなくて、初めてあった日が、この日でした――」
 そして、静かなアカペラが響く。

 『ダイアモンド クレバス』。

It's long long good-bye…



 その時遙か、遙か上空で、一匹のバジュラと一機のバルキリーがフォールドの光に包まれた…。









END(こういう展開だけは絶対に無いと思いたいですっ…)


寧ろこっちを読んで頂くと良いかも

テーマ : マクロスF
ジャンル : アニメ・コミック

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Author:Rook
ようこそおいでくださいました。
こちらはマクロスフロンティア感想・および原作とは全く関係のない妄想小話の吐き出し部屋です。
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銀河の妖精至上主義
一応映画が公開されるまでの期間限定ですが、もしかしたら延長もあるかもしれません(笑)
→とりあえず完結編公開まで。

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