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Fin du voyage -2-

Fin du voyage -2-

あら。
これ、すでに掲載していると思ってました…。
叱咤激励もいただきましたし、待って下さっている貴重な方々のためにも頑張ります。
と言っても、やはりなおしたいので次の掲載は暫くかかりそうです。。。


あれから、何日が経ったのか。

快楽の波に押し流され、それでも意識は彼岸からぎりぎり何度も引き戻される。気がつけば食事もさせて貰ったし、バスタブで二人、抱かれたままということも、もっと恥ずかしいことも色々された。
声を発したのは、彼の名を呼ぶときだけ。
それさえも、彼の唇に吸い込まれた。全身の力は入らず、すでに彼の動きに合わせて動くマリオネットのよう。
それでもなんとか腕を伸ばし、彼の背に指を這わせた。
「…痛かった?」
見えなくても、彼の背に何本もの裂傷があるのが分かった。彼は黙ったまま、再び軽く抱きしめた。
—とくん。
二人の心臓の音が、重なって調和する。これも音楽なのだと、二人の”歌”なのだと。その胸元に耳をよせた。
「起きたのか」
あやすように優しく背中を叩かれ、そしてそのまま抱き上げられる。向かったのはやはり浴室で、恥ずかしいけれど優しい腕に身を委ねる。そして身体を拭かれ、そのまま再びベッドの上へ連れて行かれたが、今回は。
「…なに?」
「ドクターが、検査に来いと」
きっちり下着と柔らかなワンピースを着せられる。ベッドから足を下ろそうとすると、再び抱き上げられた。
「立てないだろう」
そうさせたのは誰よ、という抗議の声は当然のように唇の中に溶ける。

タクシーに乗っている間は半分意識がなかったのだが、白い光に溢れた建物に入り、一気に”現実”が恐怖と共にせまってきた。だから、彼の身体にぎゅっとしがみつく。
抱かれたまま運ばれるのは恥ずかしいし何よりも彼の負担になるのは苦しい。それでも、その建物に入って直ぐ移動式寝台を持ってきた女性、おそらくは看護士に、彼が首を振ってくれたのは嬉しかった。
離れたくない。
ここで離されたら、このままお別れになりそうだから。
その恐怖が、彼にも伝わっていたのかも知れない。久し振りの再会からずっと、彼と身を離したことは一秒たりともなかったと思う。今はほんの僅かな距離でさえも恐ろしい。それ程までに、彼に依存している。
だが。
「ドクター・セルヴァンテス」
硬い彼の声に、わずかに視線を向ければ見知った顔の医師と、知らない人達。おそらくはその衣服から、医師と看護士だろう。
「…ようこそ」
ドクがそう告げて、寝台を指さした。かつて何度も世話になったあの小さな診察台ではない、そもそも彼の私室ではなく、どこか大きな病院だろう、広い病室、清潔な光に溢れた部屋。ドクの声に安心したのか、そこに身を横たえる。彼に差し出した手は握り返され,その体温に溺れるように、ゆっくりと目を閉じた。


痩せこけた頬、軽く手折れそうな細い首筋。乾いた唇に指を這わせると、嬉しそうに唇を震わせた。そして、そのまま指をなぞらえ、咽頭部にゆっくりと触れる。
「ここに…」
思わず洩れた呟きに、ドクはゆっくりと首を振った。
周囲に居た医師や看護師は、黙って手早く彼女の腕や足に点滴の針を刺し、ある看護師は彼女の腕からその血を採る。
「確率は、1%あるかどうかだな」
覚悟は出来ているか?無言の問い掛けに、アルトはただ頷くしかない。

後ろ髪を引かれながら病室を出ると、
「…クラン」
「矢三郎から話を聞いた。オズマにも伝えてある」
「…隊長に」
クランは頷く。そして、視界の隅に佇むのは。
「兄さん」
「お久しぶりです、と申し上げるべきでしょうか」
彼女と出会う寸前に話したきり、2週間ほど会ってなかった。クランとは彼女が眠っている間に、生活必需品を届けて貰い、何度か会っていた。
「無断欠勤」
鋭い声に振り向けば、クランの眼差しに射貫かれる。
「だが、後から処理は出来る、とオズマは言っていた。…覚悟しておけよ」
「ああ」
わざとそんな口調で告げるクランに、アルトは頷く。
「少し、目を閉じては如何ですか」
矢三郎が静かに告げる。それに頷いて、アルトは椅子に腰を下ろし、そのまま軽く目を閉じた。
—眠るつもりはなかったのに、彼女の夢を視た。
こんなことになるとはまったく予想もついていなかったあの頃。ランカと共に自分をからかったり、楽しそうにはしゃぐ彼女。そして、ライブ会場で、プライベートで。
彼女、シェリル・ノームは歌と共に生き、歌と共に死んでいくのだろう。
それが彼女の望みなら。だが。

—彼女を助ける方法があるとしたら。
ドクに告げられた、たった一つの可能性。
—歌を奪う代わりに、彼女に与えられる物があるとしたら。
その確率は限りなく低く、そしてチャンスもあまりにも少ない。それでもなお、自分はそれを選んだ。
彼女は自分を恨むかも知れない。
なら、それでもかまわない。
彼女を愛したもの、そして彼女が愛したもの。それらをすべて引き剥がしてもなお。
—後悔、するわけがない。

ほんの数十分の短い眠りが、ドクの声に破られたとき、彼は既に勝利を確信していた。



テーマ : マクロスF
ジャンル : アニメ・コミック

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→とりあえず完結編公開まで。

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